今回のお話は、ホラーホリックスクール図書館より
「心霊写真」です。
http://hhs.parasite.jp/hhslibrary/?p=5185
You Tubeにてゆっくり朗読動画も投稿しています。
「心霊写真」
これは、友人から聞いた話だ。
AとAのいたサークルは、大学の同期と宴会の後に写真を撮る習慣があった。
それでそのサークルで写真を撮るとき、なぜか同じサークルのBが写真に写りたがらなかった。
気になったAがBに「そう言えば、お前、写真嫌がるよなぁ。あれ、何でなん?」と、ある時飲みながら聞いたそうだ。
すると、Bはバツの悪そうな顔で事情を話した。
ちょうど、大学一年のときの話だという。
あまり金のなかったBは、大学に通うために少しでも安い物件を探していた。
すると、とある事故物件に巡り合ったらしい。
その事故物件は、家賃が相場より5千円から1万円ほど安い。
悩んだが家賃に惹かれて、Bはそのアパートに住むことにした。
大家の話によると、心理的瑕疵(かし)物件で最近自殺した人がいたところとのこと。
それでも地方から来たBにとっては初めての一人暮らしでウキウキしていたんだという。
ここまではよくある話。
それからBは手持ちのポラロイドカメラで、部屋と自分の写真を撮り始めたそうだ。
最初は心霊写真を期待して、写真を撮り続けていた。
しかしそのうち生活環境が徐々に変わり、自分の部屋が変わっていく様子を定期的に記録することへと目的が変わっていったらしい。
それがAが話を聞いたときから数えて、
大体半年くらい前の話だった。
そうやって、Bが部屋の写真を撮り始めて1ヶ月くらいしたある日。
何気なく自殺した人がいたところで、悪ふざけで亡くなったときの様子を真似て写真を撮ってみたそうだ。
不謹慎とは言え、自分の部屋に一人でいるときのちょっとした遊びのつもりだった。
そうして写真を撮ると、なんか自分の像の後ろ側が若干ボヤけているのに気がついた。
「心霊写真か?」と思ったけども、撮影時のブレにも見えた。
そのため、Bはそのときは全く気にしなかったという。
しかし、それから恐ろしい出来事が立て続けに続いた。
まず、夜中にどこからともなくバチッとかトントンとか、そういう不可解な音が聞こえるようになった。
昼間、ボケっとしていると耳元で風が吹いたような感覚を感じるようになった。もちろん、後ろに窓はない。
極めつけは夜の決まった時間、なにか重いものが吊るされるときのような音が聞こえるようになった。
そうやって、色々と不可解なことが次々起きるものだから、Bはこれはもうお化けがいるんじゃないか、と恐ろしくなったそうだ。
それで心霊写真なんかに興味があったこともあり、怖い反面、好奇心が出始めて、それで幽霊が写りそうなタイミングで写真を撮ることにしたらしい。
夜の決まった時間で音が鳴る現象、それは部屋のロフトの梯子近くで音がするから、タイミングを合わせてシャッターを切ることにしたそうだ。
それから時間が来て、音が鳴ったタイミングで写真を撮った。
ドキドキしながら、カメラから吐き出された写真を手に持ち、映像が浮き上がるのを息を呑んで待った。少し時間をおいて画像が浮き出てきた。
撮った写真を見てみる。
しかし、そこには何もなかった。
「音は気のせいで幽霊なんていないんじゃないか?」
Bはポラロイドカメラのレンズを、何となく見つめていて、
そこで誤って、自分にシャッターを切ってしまったという。
撮れた写真から映像が浮き出てきて、それを見たBは顔をひきつらせた。
自分の後ろに、何かがいるような写真が撮れていた。
ブレとかそういうのではなく、前に悪ふざけして撮ったときのボヤっとしたものとは違って、ある一点だけが明確にボヤけている。
それは明らかに不自然だったし、写真を見ていると背筋に冷たいものを感じた。心なしか視線も感じるようになった。
「だから、写真を撮るとさ、変なの写るようになったし、写真を撮った後は必ず視線を感じるようになっちゃって……自分の写真、撮れなくなったんだ」
Bはそう語った。
そこでAは、ふと疑問に思った。
「写真を撮るときは必ずって、その後、何度か撮ってたのか?」と聞いたところ、
Bは頷いて、「そりゃ、気のせいかもと思ってさ。何度か試しに撮ったんだ。それと幼なじみと写真を撮る機会があったりしてさ。それでな……」とBは話を区切った。
それでBが写真を撮る度に、ボヤけている何かが少しずつ形が明確になっていっているという。
何度も撮ると、どんどん、どんどん、それは人の形になっていき、Bを物凄い形相で、睨みつけてくる。
だからBは怖くて、もう自分の写真を撮れなくなったらしい。
「就活の証明写真とか、俺、どうしたら良いんだ……」
Bは心底参った様子で、そうぼやいていたそうだ。
これが、俺が友人から聞いた話。