山形県の月山付近には、古来より“それ”が棲むとされている。
山道に迷ったとき美しい歌声が聞こえてきたら、“それ”が仕掛けた罠と思ったほうが良い。
“それ”の姿は定かではない。
美しい女性の姿をしていた、または巨大な鳥の姿をしていたとの証言もある。
空腹と疲労で判断力が鈍っている時、その歌声を聞くと簡単に人の心を虜にしてしまう。
“それ”の正体は不明である。
それが聞こえた人間は、その殆どが消息不明になる。
山奥で美しい歌声を耳にした時、それは幸運ではなく死の宣告なのかもしれない。