防犯カメラに映る女、投稿しました

新作動画、「防犯カメラに映る女」を投稿しました。

コンビニ夜勤バイトを襲う、恐ろしい女の怖い話です。

背景画像は、近所のコンビニを自分で撮影した画像です。

自作の背景もいいものですね。

 

内容は、かなりアレンジしました。

多分、全体の8割は付け足したり、直したり。

より、怖く、面白くなっていると思います。

ぜひ、観て、読んでみてください。

 

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www.youtube.com

 

「防犯カメラに映る女」

 

OP、

 

深夜のコンビニ、客はいない。

バックルームで、アルバイトの男性店員がスマホを見ていた。

スマホの画面では、女の子のキャラクターが笑っている。

 

「・・・」(すみませんを小さく)

 

店内から、女性の声がした。

「あれ、客かな」

防犯カメラの映像を見たが、店内には誰もいない。

 

「いらっしゃいませー」

バックルームの扉を開け、レジに出てみる。

やはり、店内には誰もいなかった。

 

「気のせいかな」

戻ろうと振り向く。

 

自分の背後にあったバックルームに続く扉に、

背丈が天井まであるほどの大きな女が、張り付いていた。

 

汚れた白のワンピース。

そして悪臭をはなつ、硬く絡まりあった黒髪が、目の前を覆っていた。

黒髪の下から、2本の足がのぞいている。

ドロのなかを歩いたのか、

真っ白なはずの細い足は、茶色く濁っている。

 

大きな翼を広げるように、左右に広げられた、真っ白の骨のような両手。

その先には真っ赤なマニキュアが塗られている。

白く濁った瞳は、俺のことを、しっかりと見つめていた。

 

「・・・、・・・」あなたのいのち、もらえませんか

 

タイトル



 

これは以前、コンビニで夜勤のアルバイトをしていたときの話。

仕事を初めてから3ヶ月くらい経過した、ある晩のことだった。

同じ夜勤の人間で、その日は深夜1時に上がる予定だった先輩が、

終業時間になっても帰らない。

 

「今日、明け方まで残ってもいいかな?」

 

バックルームでジュースの品出しをしていた、私に聞いてきた。

この店は、深夜1時までは二人制、

1時から翌朝6時までは、一人での勤務になる。

 

「別に構いませんけど、どうかしたんですか?」

 

その日は、特別な仕事も無く、残業をする理由など無いはずだ。

 

「仕事じゃないよ、タイムカードももう切ったしね。

ただ事務所に、居させてくれればいいんだ」

 

レジ内の扉の先にある、狭い事務所。

横長のスペースに、事務用のパソコン机、更衣室、

在庫品用の保管棚がところ狭しと並んでいる。

 

二人が、なんとか通り抜けられるような狭い部屋。

そんな場所に、あと3,4時間も居たいというのだ。

 

「先輩の家って、店のすぐ近くでしたよね?

鍵でも、失くしたんですか?」

 

私が尋ねると、先輩は苦笑いを浮かべてこう言った。

 

「ちょっと確かめたいことがあるんだ、笑わないでくれよ」

 

中央文字、ふちどり、

 

「お前、幽霊って信じるか?」

 

 

先輩の話によると、一人で夜勤をしている際、

事務所に居ると誰もいないはずの店内から

 

「すみません」低音じゃない

 

と、声をかけられることがあるという。

 

「はーい、お待たせ致しましたー」

レジ内の扉から店に出てみても、店には誰もいないんだそうだ。

 

来客を知らせるチャイムが、風や振動などで誤作動を起こす。

または、人が入ってきても鳴らない、ということは、たまにある。

 

「よくあるじゃないですか、調子悪いんですよ、あのセンサー」

 

私は先輩をなだめた。

勿論、先輩もそれくらい知っているはずだ。

 

「いや、違うんだよ、あれは」

 

先輩がそう言いかけたとき、店内のチャイムが鳴った。

「・・・」

先輩は、明らかに怯えている。

私は、確認しに、店内に出てみた。

 

店内に、人はいた。

いつもこの時間に来る女性の常連客。

一通り店内を見まわしたあと、軽い食料品を買って帰っていった。

 

そして、また店内に人がいなくなったのを確認してから、

バックルームに戻る。

先輩は、防犯カメラのモニターを凝視していた。

その様子は、普段の気さくな先輩とは少し違っていた。

 

「大丈夫ですよ。あのひと、いつもこの時間に来るんです。水商売なのかな」

 

「いや、違うんだよ」

 

先輩が言う。

 

「ここで夜、仕事をしていると、たまに店内から声がするんだよ。

そして、店内に行っても誰もいない。

そんなことが、何度かあったから、気持ち悪いなと思っていたんだ。

 

今度、声がしたら店に出ないで店内を映している

防犯カメラの映像を見てやろうと思ってさ。

それ、やってみたんだよ。

そしたら、映ってた。

 

レジを映している映像のぎりぎりの端に、バックルームの扉が映るでしょ。

あの扉の前にいた。

バカでかい足と、膝下まである髪の毛だけが見えた」

 

先輩は、少し興奮している。

私は、正直先輩の言うことが信じられなかった。

「またまた、冗談やめてくださいよ」

たまに冗談を言う先輩だったが、このときの顔は真剣だった。

 

結局、この日は何もなかった。

先輩は、口数少なく仕事を手伝ってくれて、

仕事はいつもより早く終わり、ほとんどの時間をバックルームで雑談をしてすごした。

楽で楽しい時間だったが、先輩の顔はどこか上の空だったのが気になった。

 

朝方、いつもくる新聞屋さんと入れ替わりで、先輩は帰っていった。

SNSで色々な人と交流があるって言っていたし、

プライベートで何かあったのだろうか。

 

それから数日たったある雨の日。

今日もコンビニの仕事に行くためにバスに乗っていた。

あまり客のいない夜のバス、私はあの日のことを考えていた。

 

先輩の言っていた、防犯カメラに映る幽霊の話。

あれは、本当なのだろうか。

それとも、先輩の冗談なのだろうか。

とても、冗談を言っている風には見えなかったが。

私には、分からない。

 

バイト先のコンビニについたら、

店長が不機嫌な顔をしていた。

どうやら、先輩が辞めるらしい。

気になって、店長に詳しい話を聞いてみた。

 

先輩が私に、あの話をした次の日の晩、

バイトを辞めさせてほしいと言い出したのだという。

 

「なんなんだろうねぇ、悪い事をしてたわけじゃないとは思うんだけど」

 

不思議がる店長だったが、私にはなんとなく理由が分かった。

幽霊の出るコンビニでの夜勤が耐えられなかったのだろう。

もちろん、それが本当なら自分でも耐えられない。

 

その夜は、何事もなく仕事が進んだ。

深夜1時になり、同僚が帰ると、職場には私ひとりになってしまった。

ここからは、あまり客もこなくレジ対応が少なくなるため、品出しがメインとなる。

バカバカしい話だと思いつつも、どこか薄気味悪く感じていた。

 

「すみません」

 

ふいに、声がする。

「はい、いらっしゃいませ」

反射的に返事を返すと、バックルームから店内に出た。

誰もいなかった。

 

空耳かな、と思いつつも、

あの先輩の話が蘇る。

正直、不安だった。

たしかに、声はした。

しかし、店内に姿は見えない。

防犯カメラの映像を見ても、誰も映っていない。

 

忘れよう。

そう思って、無心になって商品の品出しをした。

幸い、今日はジュースなどの飲み物の補充がメインなので、

店内には出なくても済む。

バックルームにうず高く積まれたダンボールを崩しながら、

飲み物の陳列棚の後ろから商品を補充していった。

 

2時間ほど経っただろうか。

時刻は、深夜3時すぎあたりだった。

ようやく、気持ちが落ち着いてきた頃に、また

 

「すみません」

 

声がした。

自分のすぐ後ろ、店内へと続く扉の向こうから声が聞こえた。



急いでモニタを見る。

誰もいない。

なんだよ、と思い、しばらくモニタの映像を見続けていた。

ふと、思い出した。

先輩は、バックルームの扉のことを言っていた。

視線をずらす。



モニターに映った、レジの内側。

防犯カメラの、死角ギリギリに映る、事務所への扉の下半分。

そこに、黒く長い髪と、女の足が映っていた。

 

今、自分がいるすぐ近く。

あのドアの向こうに、女がいる。

 

それも、立っているのではない。

カメラに映った部分から、その女の状態を考えると、壁にしがみついているのだ。

 

壁に張り付いているような、女の足。

そして、膝から上を覆い隠している、長い髪。

モニターには、そこしか映っていない。

 

私は、振り返れなかった。

自分のすぐ後ろにある扉の、

ちょうど私の胸元から頭頂部くらいまでの位置にある、

一辺50センチメートルほどの正方形の窓。

その窓いっぱいに、あの女の見開いた目が、

見えてしまうような気がした。

 

☆フェードイン・アウト

 

どれくらい、女の映っていた映像を見ていただろうか。

我を取り戻すと、すでにモニターの中には誰も映ってなかった。

 

時計を見ると、午前5時を回っている。

外が白み始めていて、小鳥の鳴き声が聞こえる。

毎朝お世話になっている新聞配達のおじさんの声を聞いたときに、

ようやく、元の世界に帰ってきたと実感できた。

 

安心したのもつかの間、数時間もすれば、

朝のラッシュが始まってしまう。

まだ少し残っていた品出しを手早く済ませ、朝の作業に取り掛かった。

 

その日の仕事終わりに、店長に防犯カメラの映像の確認の仕方を聞いた。

どうやら、先輩も辞める間際、同じことを聞いていたという。

あの幽霊のことが、気になっていたんだろうなと思った。

 

ひとり、バックルームで問題の映像を見てみる。

まずは、先輩の映像を確認する。

 

それは、先輩が残っていった日より前。

先輩が、一人で夜勤をしていた晩だった。

誰も居ない店内からの声に応えて、店に出る先輩が映った映像。

やはりソレも、映っていた。

 

カメラの死角ギリギリの事務所への扉、

その壁にしがみついているかのような女の足と髪。

 

そして扉が開き先輩が出てくる。

その女を通過して。

きっと先輩も、これを観たのだろう。

 

それから、自分の映像も確認しようとして、止めた。

きっと同じ映像が映し出されているだろうし、

何より、もうあの女を見たくない。

 

1ヶ月後、俺はバイトを辞めた。

店長は渋っていたが、知ったことではなかった。

後日、バイトの後輩にLINEて確認したが、

店内におかしなところは無いそうだ。

あの女は一体、何だったのだろう。

 

今は、とあるバーで働いている。

コンビニ時代より忙しいが、毎日が充実している。

 

店内のテレビが、ニュースを流していた。

見覚えのある顔が映し出されている。

先輩だった。

先輩が、9人の自殺を手助けして、

殺人罪で起訴されたとのことだった。

 

あの後、女の幽霊は出なくなった。

もしかしたら、先輩のあとについていったのではないだろうか。

先輩が警察官に囲まれ、手元を隠しながら、

パトカーに乗り込む映像の背後に、

ゲラゲラ笑う、あの女の姿が見えた気がした。

 

終わり。