異常な家屋と気味が悪い子供

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ちょっと躓いたりもしたけれど、
何事もなかったように、
また、怪談投稿を再開します。
今回の話は最後にオチもあるので、ぜひ最後まで見てみてくださいね。

OPの部分は、なんとなく「世にも奇妙な物語」っぽいイメージです。
怪異も怖いけど、本当に怖いのは人間。っていうのは、ちょっと人間本位すぎるかなとも思うけれど、定番のテーマですね。
自分個人としては、地球がもつ自然というシステムの中では、人間もまた自然を構成するパーツのひとつ、ぐらいの感覚が好きです。

今回は、動画のスタイルを動画投稿し始めた初期の頃っぽくしてみました。
作業用とか、睡眠用に使う人がいるんだから、タイトルでのびっくり音はやめろっていうのに、未だにやってしまう悪いクセが出ております。

 

 

異常な家屋と気味が悪い子供

(やばい物件より)

(街の効果音、またはオフィス音の効果音、フェードアウト)


世の中には、新築物件や年月の経ったビル、
最近人気のある古民家など、
さまざまな不動産が存在しています。

その中には、事故物件などと呼ばれる、
通常とは違った経歴をもつ物件が存在します。

そしてそのような物件では
普段では考えつかないような怖い体験をする方も、
中にはいらっしゃいます。

しかし、本当に恐ろしいのは、
怪異そのものよりも、
それらを商品としてやりとりしている人間たち、
なのではないでしょうか。

街、道路のイメージ映像

(街の効果音)
・タイトルコール

俺は、競売にかけられた不動産の、
様々な調査を請け負ってる会社で働いている。
仕事内容は、家屋の内壁や外壁、天井や基礎の状態、
柱や壁の傾斜測定などを、写真に撮りながら調査し、
書類にまとめていく作業だ。

数日前、前任者が急に会社に来なくなったとかなんだかで、
やりかけの物件が俺に廻ってきた。

まぁ正直うちの会社は、とある筋の人から頼まれた
「訳あり物件」を取り扱うようなこともやっているので、
こういうことはしょっちゅうある。

俺は、たいして気にもとめず、
前任者が途中まで作った調査資料という汚いメモ書きを持って、
遠路はるばる田舎までやって来た。

 

その物件は、かなり古い建物で損壊が激しく、
あちこちにヒビが入ってたり、湿っぽい匂いがしていた。
相当、テンション下がってたんだけど、
まぁとにかく仕事だからってことで、
気合入れ直してせっせと調査を始めた。

一時間くらい経った頃。
ふと窓から外を見ると、一人の子供が、
向こうを向いてしゃがみ込んでいる。
なにやら遊んでいるようだ。

注意しようかと思ったが、
どこか気味が悪かったんだよね、その子。
なんか覇気がないというか、
微動だにしないというか。

子供特有の元気さが、まるで感じられなかった。
田舎だけあって、辺りはありえない位に
静まり返ってるし、正直少し怖くなったってのもある。

調査している物件の老朽化具合からみて、
3年はほったらかしになってるふうに見える。
「そりゃ子供の遊び場にもなるわな」と思い直し、
「今日は遊んでも良し!」と勝手に判断してあげた。
他人(ひと)んちだけど。

それからしばらくは、何事もなく仕事を
続けてたんだけど、前任者のメモの隅の方に、

「台所がおかしい」

って書いてあるのに気がついた。

調査資料は、その書き込みのほとんどが
部屋の寸法などの数字なので、
そういう文章が書いてあるのは珍しい。

気になって台所の方へ行ってみると、
床が湿ってる以外は
特におかしそうなところはなかった。

ふと、向かいの部屋の奥に置いてある姿見に、
子供の体が少しだけ映ってるのが見えた。
暗くて良くわかんなかったけど間違いない、
さっきの子供だ。

そうか、入ってきちゃったんだな。
そう、ぼんやり考えてたけど、
その子供、ほんと気味悪いんだよね。

物音一つたてないし、辺りは静かすぎるし、
おまけに古い家の独特の匂いとかにやられちゃって、
なんだか気持ち悪くなってきた。

もう、その子を見に行く勇気とかもなくて、
とりあえず、隣にある風呂場の調査に向かった。
というか、風呂場へ逃げ込んだ。

風呂場は風呂場で、またひどかった。
多分、カビのせいだろうけど、
きな臭い匂いと、むせ返るような息苦しさ。

こりゃ長居はできんな、と思ってメモを見ると、
風呂場は、一通り計測されてて安心した。
ただ、その下に、

「風呂場がやばい」

と書いてあった。


普段なら「なにそれ」って感じで
笑うところなんだけど、
その時の俺は、明らかに動揺していた。

手に持っているメモの筆跡が、
書き始めの頃と比べて
どんどん酷くなってきている。

文字が震えるように波打ってしまって、
何が書いてあるのか、ほとんど読めない。

このメモを残した前任者は、無事なんだろうか。
たしか、突然会社に来なくなったはずだ。
まだ、生きているといいが。

ふと周りを見ると、閉めた記憶もないのに
風呂場の扉が閉まってる。
そして、扉のすりガラスのところに
人影が立ってるのが見えた。

さっきの子供だろうか?

色々考えてたら、そのうちすりガラスの人影が、
ものすごい勢いで動き始めた。

なんていうか、踊り狂ってるような感じだった。
頭を上下左右に振ったり、手足をバタバタさせたり、
全身をくねくね動かしたり。

でも、床を踏みしめる音は一切しない。気味が悪いほど静かだった。
ただ目の前で、人影だけがすごい勢いでうごめいている。

もう足がすくんで、うまく歩けなかった。
手は、本当にぶるぶる震えていた。
なにせ尋常ではなかったから、その人影の動きが、、、

どう見ても、人間の動きじゃない。

とは言え、このままここで
じっとしてる訳にもいかない。
風呂場にあった小さな窓から逃げようと、
顔を上げて窓を見た。

窓枠のレバーを引くと、手前に傾く感じで
開く窓だったので、開放部分が狭く、
はたして、大人の体が通るかどうか。

しばらく悩んでたんだけど、
ひょっとしてと思って、あのメモを見てみた。
なんか対策が書いてあるかもと期待していた。

しかし、やっぱりほとんど読めない。
かろうじて読めた一行が、

「顔がない」

だった。

(少し間を置く)

そのとき、窓にうっすらと子供の姿が反射して映った。
多分、真後ろに立ってる。

いつの間に入ったんだ。
相変わらず、何の音も立てずに、この子供は移動してくる。
もう、逃げられない。

意を決して、俺は後ろを振り返る。

(間を置く)

そこには、、、誰もいなかった。

(間を置く)
(室内、効果音)

会社に帰った後に俺は、あることに気がついた。
前任者の残したメモの日付は、三年前の日付だった。
この物件を俺に振ってきた上司に、
そのことを言うと、

「あれおかしいな、もう終わったやつだよこれ」

そう言って、そのまま向こうへ行こうとしたんで、
すぐに腕をつかんで、この物件の詳細を聞いた。
なんでも、顔がぐしゃぐしゃに潰れた子供の霊が出るという、
結構ヘビーな物件だったという。

それで当時の担当者が、
そのことを提出資料に書いたものだから、
クライアントが「そんな物件はいらん」と言って、
つき返してきたという、いわくつきの物件だそうだ。

清書された書類を見ると、確かに「顔がない」とか
「風呂場やばい」とか書いてあった。

まぁ、こういった物件は時々あるらしく、
幽霊が出る、という話を聞いた場合は、
備考欄に「心理的瑕疵有り」と、
さりげなく書くのが通例になってるそうだ。

他の瑕疵物件の書類も見せてもらったが、
なるほどきちんと明記してあった。

なんで今頃こんなものが出てきたんでしょうかね?
と上司に聞いたら、

「んー、まだ取り憑いているんじゃないかな。
当時の担当者って俺だし」