上の部屋のおっさん【人怖】ゆっくり怪談

f:id:seiuipad:20211119214940j:plain

馬のように嘶くおっさんは、おっさんが馬なのか、馬がおっさんなのか、人参は好きなのか。
謎のおっさんが引っ越してきた悪夢のお話。


www.youtube.com

 

蛍光灯、ごみ捨て場、
俺の住んでいるマンションの
真上の部屋に、人の良さそうな
初老のおっさんが引っ越してきた。

朝、ゴミ出ししていると、
「おはようございまぁす」
笑顔で挨拶してくれるんだ。

おっさんが越してきてから1ヵ月
ほど経った頃、夜中11時くらいに
上の部屋から、イーッ!とかアーッ!
みたいな感じの奇声が
聞こえるようになった。

後はブルルルルっという、
何かよくわからない音。
うちのマンションは、そんな
薄い壁でもないし、かなりデカい
音だと思う。
奇声は、その後2時間ほど続いた。

はじめはテレビか何かの音だろう
と気にしなかったんだが、
その日から騒音が毎日続くようになった
ので、さすがに辛くなってきた。

我慢できなくなって、さすがに
上の階まで苦情を言いに行くことに。
あのおっさん、朝は笑顔で挨拶してくるし、
話せばわかる人だと思った。
甘かった。

喧嘩腰じゃなく紳士的にすれば、
ご近所トラブルにはならないだろう、
と思っていたんだ。

夜11時頃。
また、例の奇声が聞こえてきたので、
俺はおっさんの部屋に行った。

ドアの前に来ると、
中から、アアアアアッ!
とかイイイイイッ!とか聞こえる。
結構、デカい音だ。

呼び鈴を鳴らしたら、ブルルッ、ブルルッって
音が近づいてきた。
なんだ?と思ってると、勢いよくドアが開いて、
おっさんが物凄い勢いで首を横に振りながら、
ブルルッブルルッって、馬みたいに唇を震わせている。

しばらく呆然としてると、おっさん、

イイイイイッ! ブルルッブルルッ
ブルッ、アアアアアッ! 
ウウウウウッ! ブルッブルルッ!

訳の分からないことを叫びだした。

おっさんは白目で、口の端から
泡が出ていたと思う。
俺、すいませんって謝って、
走って逃げ出したよ。

自分の部屋に戻ってから、
何なんだ、あのおっさんって考えてると、
俺の部屋のドアの外から、
ブルルッ!って音がした。
俺が、ガクブルだよ。
その後、10分ほどでおっさんは
帰ったみたいだが、結局、俺は一晩寝つけなかった。

次の日の朝、怖かったけど用事があったんで、
おっさんと遭遇しないように、
いつもより早く家を出た。

漫画喫茶で少し時間潰すかな、
と思って家を出たついでに
ゴミ出ししてると、

「おはようございまぁす!」

見上げたら、いつも以上に
笑顔のおっさんが顔を出してた。

今、俺は友達の家に泊まって
引っ越しを考えてるよ。
今考えりゃ怖くないし、間抜けだな。
でも、怖かったんだ。